山陰・奥出雲めぐり~中国山地縦断編~【④出雲横田→出雲坂根】
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山陰・奥出雲めぐり~中国山地縦断編~【③宍道→出雲横田】 - 社会不適合者の鑑~徒然なる旅路~
ここは神社ではなく、駅だ。
立派なしめ縄でお出迎え。
ここは奥出雲町の中心地、横田地区の代表駅。
駅前はロータリーとなっており、コミュニティバスも発着する。
駅前の道路は街路樹が整備されており、道を挟んで町役場が立地する。
閑散としているのは、平日の昼過ぎということもあるだろうが、朝夕の駅の利用はどれほどあるのかと少し心配になる。
豪雪地帯名物、タテ型信号機。
信号が必要なほどの交通量は、今のところはない。
出雲横田駅は山陰の旅行ではめずらしく、駅から3分圏内にコンビニがあって買い出しが可能。
確か15年ほど前までは、兵庫県の自宅の近くにもポプラがあったと記憶しているが、知らない間にローソンに変わっていた。
山陰地方では現在も、ポプラが幅を利かせているらしい。
(ただし、深夜閉まるのはご愛嬌。)
横田駅に戻ってきた。
ここから先、備後落合方面は超がつくほどの閑散区間。
時刻表からは4本あるように見えるが、11:15発は臨時の「奥出雲おろち号」(しかも今はコロナで走ってない)のため、定期列車は1日3本、最終は15時台といった状況だ。
この1日3本という、まるで飲み薬か何かかと思うような数字は、JR西日本では最小の運行本数である。
今まで2両でやってきた列車は、2つに分割されていた。
ここから先、備後落合へは左側の1両だけが向かう。
右側のタラコ色はこのまま宍道に帰ってしまうらしい。
備後落合行き1両編成。
ここから終点まではたったの5駅だが、1時間20分を要する。
乗客は6名。地元客はおらず、全員が観光目的のようだ。
13:09 出雲横田発
13:30 出雲坂根着。ここでは20分間の停車。
この駅は、今回の旅の目的の一つでもある。
出雲坂根駅ホームには、「延命水」と呼ばれる大変に美味な湧き水がわいており、県内外から多くの人がこの水を求めてやってくる。
駅ホームのかたわら、タヌキの像の間から水が湧いていた。
その昔、この地域に寿命100年を超える古狸がおり、この水を愛飲していたのだとか。
この水を飲むと、どうやら長寿になるようだ。
とてもありがたい水ということなので、早速いただくことに。
クセがなく、まろやかで飲みやすい水だった。
このぐらいの軟水であれば、コーヒーを淹れても良さそうだ。
列車の乗客も数人、空のペットボトルを持参してこの水を汲みに来ていたようだった。
この駅の標高は565m。気温は宍道と比べるとかなり低く、長袖一枚だと震えるほどだ。
道路を挟んで反対側にも延命水と書かれた看板が。
英語表記「ENMEI SUI」は果たして固有名詞なのだろうか。
これじゃ外国人には伝わらなさそうだが・・・
しかし不思議に思って降りてみると、
こちらにも延命水が湧き出ていた。しかも勢いがスゴい。
どうやら車で乗り付けた人はこっちで汲むようになっているようだ。
ポリタンクでもって数十リットル単位で汲んで帰る人も、中にはいるのだとか。
給水所の向かい側は沢になっている。いかにも最上流、といった様子だ。
しかしこの20分の長時間停車、観光利用には確かにうってつけだが、地元利用の実用性の面ではどうなのだろうか。
調べてみると元々はこの列車、途中の停車時間はあまりなく今よりも短い時間で備後落合までを走破していたようだった。
ただ、立ち寄る人の多い横田や坂根での停車時間を年々延ばしていった結果、気付いたら勝手に観光列車化していた、というのが実情だとか。
これもひとえに、延命水の効能だろうか。
鉄道というものは、その鉄の摩擦係数が低い故に坂道に弱い。
昔は坂道を避けるようになるべく山を避けて遠回りしたり、どうしても越えなければならない場合はスイッチバック等をして切り抜けた。
現在はトンネルの開削などでその多くが姿を消しているが、ここには残っている。
出雲坂根駅の先は行き止まりになっていて、折り返さなければならない。
ただ、スイッチバックまでの道路が獣道で歩いて向かうことは困難なので、列車の車内から見学することとする。
出雲坂根駅周辺には人家らしきものは無いが、堂々とバス停がある。
驚くことに、鉄道の2倍にあたる1日6往復の運行があるようだ。
鉄道の方は、安定の定期列車1日3往復。
木次方面の始発が10時台では、通勤通学利用は困難だろう。
そろそろ発車時刻が迫っているため、車内に戻る。
乗客の増減はなく、同じ顔ぶれである。
次回
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へ続く