山陰・奥出雲めぐり~中国山地縦断編~【⑤出雲坂根→備後落合】
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木次線の各駅にはヤマタノオロチ神話に因んだ愛称が付けられている。
出雲坂根駅の愛称は「天真名井」(あめのまない)。
13:50 出雲坂根発
ここから終点の備後落合まではたった3駅だが、43分を要する。
ここ出雲坂根駅の標高は564mだが、次の三井野原駅は726m。
1駅間で162mも登る。
列車は今までと逆進して、どんどんと坂道を上る。
数分上って鬱蒼とした森の中に停車。
運転士は慣れた手つきで反対側の運転台へ移動する。
5分ほど停止したのち、方向を変えて出発。
エンジンを唸らせ、今にも止まりそうな速度で坂を上る。
進んでいくと、森林の中に何やら構造物が・・・
これこそが本日のお目当ての一つ、国道314号「奥出雲おろちループ」である。
1992(平成4)年に完成した、国内最大級の2重ループ橋。
地図で見ると分かるように、坂根~三井野原間の162mにもなる標高差を、木次線はスイッチバックで、国道314号はループ橋で切り抜けている。
列車はおろちループと近付きつつ離れつつ勾配を上る。
そもそも木次線は昭和期にすでに廃止が取り沙汰されていたが、「並行道路が未整備」という理由で廃止を免れてきた。
ただ平成に入り「奥出雲おろちループ」が完成したことで、かえって木次線の存在意義が薄れてしまった、いわば商売敵でもある。
自家用車でおろちループを通れば、木次線よりも早く広島側に行くことができるからだ。
ただ景色だけは圧巻。素晴らしいの一言に尽きる。
冬季はこの辺り一面雪に覆われて、また違った趣があるに違いない。
でも木次線はよく冬眠(除雪が追い付かず長期運休)するから、何とも言い難い。
思わず乗客みな一斉に立ち上がり、各々のカメラを向ける。
このあたり既に地元の足という役割はなくなり、観光列車然としている印象だ。
標高700mを超えると、すでに紅葉となった木もあった。
紅葉には確か、最低気温10度を下回らないといけないはずなので、このあたり随分と冷え込むのだろう。
宍道湖畔の宍道駅は標高5mだったので、この車両で721mも登ってきたことになる。
中国山地恐るべし。
ここで観光客らしき人たちが降りて、観光客らしき人たちが乗ってきた。
乗客数は差し引き変わらず・・・
目の前は駅直結のスキー場となっていて、木次線が元気だった頃はスキー客用の臨時列車がここまで仕立てられたこともあったんだとか。
分水嶺を越えて下り坂に。時刻表は寂しい。
14:33 木次線の終点、備後落合着。
ここで5分の接続で芸備線に乗り換え。
「落合」という地名は、全国的に道が合流する箇所に付けられる地名。
ここ備後落合も例外ではなく、芸備線と木次線が合流する中国山地きっての一大ターミナル。
・・・といっても、無人駅。
構内の広さは、過去の栄華を今に伝える。
昔は山陽と山陰とを結ぶ汽車が、多くここを通った。
現在は高速バス網が大いに発展し、ここに来るのは1両のディーゼルカーのみとなってしまった。
一応3方向に行けるが、定期列車は3線あわせて11本。
それでも1日のうち、14時台だけは3方向がここでBINGO落ち合って、相互に乗り換えられる仕様となっている。
周辺に人家や商店はなく、最終のあと取り残されたらどうなるか分かったもんじゃない。
特に冬季はなおさらだ。
案内板だけなぜか新調されており、いかにもJRが好みそうなデザインのものに交換されていた。
14:38発普通新見行き。
さっきの車両の色違いで、芸備線を東へ発つ。
これに置いて行かれたら次は6時間後。シャレにならないので足早に乗り込む。
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へ続く